よくある相談事例Case studies

若い年齢で発症したので、これからが心配。

若い年齢で発症したので、これからが心配。

認知症は高齢者に多い病気ですが、65歳未満で発症するものを「若年性認知症」と言います。ご本人は現役世代のため、経済的な不安やご家族の心的な影響も大きいのが「若年性認知症」の特徴です。

若年であるがゆえに「疲れているから」と認知症とは思わず見過ごしてしまいがちですが、仕事や日常生活で物忘れや単純なミスを繰り返す場合は、まずは早めに受診しましょう。かかりつけ医に相談し、物忘れ外来や認知症疾患医療センターなど、専門の診療科や医療機関を受診することをお勧めします。受診する際は、ご家族も同行して一緒に説明を聞くことが大切です。
認知症は、なるべく早い時期に治療を始めることが重要です。早期発見・早期治療によって進行を遅らせることができ、日常生活がしやすくなります。また家族と将来のことや家族内の重要な事を話し合ったり、決めたりすることができるなど、ご本人や家族にもメリットがあります。

若年発症の課題は、今まで出来ていたことが上手くいかないことで、よりイライラ感や不安、ショックを感じやすく、うつや興奮、妄想、攻撃的になるといった「行動・心理症状(BPSD)」が現れやすくなります。ここで重要なのは、脳の機能や体力、意欲を維持するためにも仕事や趣味、人との関わり、運動など、日々の生活を、これまで通り楽しく続けるよう心掛けることです。ご本人が安心できる環境調整や周りの接し方が一番の安定薬になります。

もう一つの課題は経済面です。成長期の子供がいる等、家族に与える経済的な不安や負担は大きいため、職場に相談して、出来る限り今の仕事を続けることが大切です。例えば、病気によって生じる苦手部分をサポートしてもらったり、事務や軽作業に配置転換するなど、ご本人の状態を踏まえ、仕事を継続しやすい環境を整備してもらいます。

どうしても退職せざるを得ない場合は、企業の障害者雇用枠で再就職する方法を考えます。ハローワークや障害者職業センターなどで再就職のためのトレーニングを受けながら、働く機会を見つける方法もあります。
認知症が進行して仕事をすること自体が難しくなった場合は、傷病手当金や障害年金など公的な制度による経済的支援を早めに受けましょう。

これらの相談は、受診先の医療機関や認知症疾患医療センター、地域包括支援センターなどで相談できます。

回答者

済生会宇都宮病院 牧 宏一
済生会宇都宮病院 GoogleMap