家族が認知症の兆候を感じたとしても、ご本人はうまく金銭管理できていると思い込んでいるかもしれません。そのような状態でお金を管理する権利を奪ってしまうと、自尊心を奪うことにもなります。家族に対する不信感が生じて、今後の関係にも影響を及ぼす可能性があるため、使い慣れた財布に小銭を入れて本人が管理するのも選択肢のひとつです。自由に使用できるお金があることでご本人は安心します。
認知症の進行によって金銭管理ができなくなり、悪徳商法や特殊詐欺など思わぬトラブルに遭うことがあります。計画性や判断能力が低下するため、年金支給と同時にすべて使ってしまったり、欲求のコントロールができず、高額な商品を次々購入することもあります。そのため、家族全体でご本人を見守り、早期対応ができるように対策(警察、消費生活センターへの相談など)を練りましょう。家族内の1人が金銭を管理することは、親族間でトラブルになることもありますので注意が必要です。
「本人の意思が確認できない」となると、預貯金の口座が凍結され、法的手続きや契約などができなくなります。医療や介護費用を家族が自己資金で立て替えなくてはならないことも考えられます。そのため、事前に利用できる支援やサービスについて調べて対策しておきましょう。「家族信託」※1や「成年後見制度」※2、社会福祉協議会の「日常生活自立支援事業」※3などがあります。
※1)本人の資産の管理や処分を家族にまかせる制度です。
※2)認知症等により自身で判断することに不安や心配がある方の財産管理や様々な契約や手続きを家庭裁判所が選んだ後見人などが本人に代わって支援を行います。また悪徳商法などで被害に遭わないよう、本人の権利を守るための制度です。支援の内容は本人の判断能力によって異なります。
※3)一定の判断能力はあるものの、自身で判断することに不安や心配がある方が適切に福祉サービスを利用することができるよう助け、日常的な金銭管理の支援を行います。
「成年後見制度」、「日常生活自立支援事業」の詳細については、お近くの地域包括支援センター・社会福祉協議会にお問い合わせください。
宇都宮市社会福祉協議会 溝江 幸子